吉田晴登の名を映画ファンの胸に深く刻み込んだ作品として、今泉力哉監督がメガホンをとった映画『ちひろさん』を挙げないわけにはいかない。有村架純演じる主人公の周囲に集まる市井の人々の中で、彼が演じたマコトの存在感はひときわ異彩を放っていた。孤独を抱えながらも誰かと心を通わせたいと願う繊細な少年の機微を、これ以上ないほど自然な呼吸感で演じ切った。
同作において吉田が見せた演技は、劇的なクライマックスを誇張するのではなく、日常の何気ない会話や食事の風景の中にこそ宿る真実味を捉えていた。今泉監督特有の長回しと抑制の効いた演出に見事に応え、登場人物の呼吸や間合いを完璧にモノにした演技は、目の肥えた映画評論家からも絶賛を浴びることとなった。