「本に書いてある通りにフレームワークを使っているのに、なぜか現場で全く通用しない」――。大手人材開発企業が2026年末に実施したビジネスパーソン意識調査(有効回答数1,200名)によると、ロジカルシンキング関連書籍を3冊以上読んだ経験があるビジネスパーソンのうち、約73.4%が「実際の業務で思考法を使いこなせている実感がない」と回答しています。知識への投資が、そのまま実務のパフォーマンスに結びついていない現実が浮き彫りになりました。
現場取材を重ねると、つまずくビジネスパーソンには共通する「3つの壁」が存在することが見えてきます。第1の壁は、「MECE病」と呼ばれる手段の目的化です。事象を漏れなく重複なく分類することに終始し、「きれいに整理されたが、何一つ新しい発見がない資料」を作り上げてしまうケースが散見されます。分類自体は作業に過ぎず、ビジネスの本質である意思決定には寄与しません。
第2の壁は、「問い(課題)そのものを疑わない盲信」です。与えられた前提がそもそも間違っている場合、どれほど精緻にロジックツリーを組んだところで、導き出される答えは的外れなものになります。論理の出発点となる前提を問い直す「批判的思考(クリティカルシンキング)」が欠落したまま、枠組みだけに頼る姿勢が致命的な欠陥を生むのです。
第3の壁は、認知心理学でいう「認知的過負荷」です。米国の認知心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した「システム1(直感・速い思考)」と「システム2(論理・遅い思考)」の観点から見ると、初心者がフレームワークのルールを頭で思い出しながら考えようとする行為は、システム2に過度な負荷をかけます。結果として、会議のテンポについていけず、口を開けないまま議論が終わってしまいます。