言葉の使い分けにおいて、多くの人が陥る罠が「社外の取引先に対しても『お疲れ様です』を使ってしまう」というミスです。メールの書き出しで「〇〇様、いつもお疲れ様です」と送ってしまい、先方のベテラン担当者から冷ややかな対応をされた経験を持つ若手社員は少なくありません。
文化審議会答申「敬語の指針」では、敬語の本質を「自己と相手との関係性や場面に応じた相互尊重の表現」と位置づけています。労いの言葉である「疲れ」という語は、本来は苦楽を共にする同じ組織内の仲間だからこそ共有できる感情です。外部のクライアントや取引先に対して「疲れているはずだ」と決めつけて労う行為は、相手とのプロフェッショナルな距離感を無視した「馴れ馴れしさ」や「失礼」と解釈される余地を残します。
人事コンサルティング機関の2026年企業調査によると、40代以上の管理職・役員の約43%が「社外からのメールで『お疲れ様です』と始まると違和感を覚える」と回答しています。社外に対する挨拶文やメールの冒頭は、迷わず「いつも大変お世話になっております」を選択するのがマナーの定石です。また、共同プロジェクトで長期間汗を流したパートナー企業であっても、「お疲れ様でした」の代わりに「本日は誠にありがとうございました」「お力添えに心より感謝申し上げます」と言い換えることで、相手の自尊心を損なうことなく最高級の敬意を伝えられます。