牛乳を加熱したときに表面にできる薄皮のような膜には、物理化学の正式な名称が存在します。この現象は発見者の名を取って「ラムスデン現象(Ramsden phenomenon)」と呼ばれています。
膜が形成される主たる原因は、牛乳に含まれるたんぱく質の熱変性と表面からの水分蒸発にあります。牛乳を40℃以上に温め始めると、液面から水分が徐々に蒸発し、表面付近の成分濃度が急激に高まります。温度が60℃前後を超えると、熱に反応したたんぱく質(主にカゼインやホエイプロテイン)が立体構造を変化させて網目状に凝固し、周囲の乳脂肪分を包み込みながら薄い皮膜を形成するのです。
つまり、あの膜は異物や品質劣化によるものではなく、熱と蒸発が織りなす極めて自然な物理化学反応の結果といえます。和食の伝統食材である「湯葉(ゆば)」が豆乳を熱して作られるのとまったく同じ原理です。