『秒速5センチメートル』が気持ち悪いと言われる理由と遠野貴樹の未練

『秒速5センチメートル』が気持ち悪いと言われる理由と遠野貴樹の未練

『秒速5センチメートル』が気持ち悪いと言われる理由と遠野貴樹の未練にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。

ネットコミュニティ上で頻繁に議論の的となるのが、「遠野貴樹=クズ男」という辛辣なレッテルです。彼が暴力や暴言を振るうような分かりやすい悪人であれば、これほど議論が紛糾することはありません。観客が貴樹に強い苛立ちを覚えるのは、彼が「優しく礼儀正しい善人の顔をしたまま、周囲の女性を搾取し傷つける無自覚さ」を持っている点にあります。

鹿児島・種子島を舞台にした第二話において、同級生の澄田花苗は貴樹に一途な片想いを寄せます。貴樹は花苗の想いに気づきながらも、明確な拒絕も受容もせず、物憂げな態度で彼女の隣に居続けます。花苗は貴樹の優しさに縋りつつも、彼が自分を一切見ておらず、「自分の向こう側にある遠くの何か」だけを見つめている絶望を悟ります。この「澄田花苗がかわいそうすぎる」という視聴者の嘆きは、貴樹が持つ受動的攻撃性への怒りそのものです。

さらに罪深いとされるのが、第三話で描かれる社会人時代の恋人・水野理紗との関係です。東京でSEとして働く貴樹は理紗と3年間にわたり交際しますが、心は常に過去に置かれたままでした。理紗から送られた「私たちは1000回メールをやり取りしても、心は1センチしか近づけなかった」という痛切な別れのメッセージは、貴樹が他者に対して築いた分厚い心理的防壁を象徴しています。傷つくことを極度に恐れるあまり、目の前の生身の人間と向き合わず、過去の聖域に逃げ込む貴樹の姿勢は、大人の恋愛としてあまりにも不誠実であると批判されても抗弁できません。

田中 結衣
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田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。