園芸コミュニティや知恵袋、SNS上の投稿を検証すると、「母の日にプレゼントされた開花株を庭に植えたりベランダに置いたりしたが、2年目以降まったく咲かない」という投稿が毎年初夏に急増します。開花株として店頭に並ぶ鉢植え紫陽花は、プロの生産者が前年の秋からハウス内の温度、日照時間、矮化剤(草丈を抑える薬剤)、特殊配合の液肥を綿密に制御して「人為的に完璧な満開状態」を作り出した工業製品に近い芸術品です。
園芸専門サイト『みゆ庭』や『ohana blog』の現場取材でも、購入株をそのまま一般家庭の自然環境に放任した途端、植物本来の生理サイクルへの適応が追いつかなくなるケースが報告されています。特に鉢植え紫陽花が咲かない対策として見落とされやすいのが、内部の「根詰まり」です。ギフト用の鉢は見た目のコンパクトさを重視して根鉢に対して小さめの容器が選ばれていることが多く、開花が終わる6〜7月には鉢の中が根で埋め尽くされています。水が浸透せず、呼吸困難に陥った株は花芽を作る余力を失います。
さらに、近年増加しているのが紫陽花の冬越しと寒さ対策の不備です。冬場に葉が落ちて枯れ枝のようになると、水やりを完全に止めてしまう人が後を絶ちません。しかし、枝の先端には微小な花芽がすでに宿っています。冬の乾いた寒風に晒され続けると、春を迎える前に花芽がミイラ化して脱落します。逆に、寒さを心配するあまり冬中暖かい暖房の効いた室内に保護してしまうと、一定期間の低温を感知して休眠から目覚める「低温要求性(バーナリゼーション)」が満たされず、春になっても芽が動き出さないという二重の罠が存在します。