絶賛されるAutoHotkeyですが、実務導入やプライベートでの利用にあたっては、明確に把握しておくべき「リスク」と「技術的制約」が存在します。
第一に挙げられるのが、オンラインゲームの不正防止プログラム(アンチチート)によるアカウント停止リスクです。AutoHotkeyはOSの低レベルキーボードフック(WH_KEYBOARD_LL)を利用してキーストロークを監視・介入します。この挙動が、『VALORANT(Riot Vanguard)』や『Apex Legends(Easy Anti-Cheat)』などの厳格なゲームセキュリティシステムにおいて「マクロツール」「不正入力自動化」と誤認され、スクリプトを実行したままゲームを起動しただけでアカウントBANの対象となるケースが報告されています。ゲームを起動する際は、必ずタスクバーからAutoHotkeyを終了(Exit)させておくのが鉄則です。
第二に、セキュリティソフト(アンチウイルス・EDR)による誤検知(False Positive)の問題です。AutoHotkeyの実行ファイル本体や、スクリプトを .exe 形式へコンパイルしたバイナリは、キーロガーやトロイの木馬と挙動パターンが酷似しているため、CrowdStrikeやWindows Defenderなどによって隔離・ブロックされる事象が発生します。AutoHotkey自体はGitHub上でソースコードが公開されているクリーンなオープンソースソフトウェアですが、導入時には公式リポジトリからの安全なダウンロードを徹底し、必要に応じて除外設定を行うリテラシーが求められます。
第三に、企業環境におけるシャドーITリスクです。社内セキュリティポリシーで「許可されていない常駐ソフトウェアのインストール禁止」が定められている場合、業務効率化のためであっても無断導入は懲戒やインシデントの対象となり得ます。情シス部門への事前申請や、後述するプログラマブルキーボードによるハードウェア代替案の検討など、組織のガバナンスと調和させる姿勢が欠かせません。