日本国内において「走者の聖地」と称される拠点はいくつか存在しますが、御殿場市陸上競技場が際立った存在感を放ち続ける背景には、地理的・気候的な明確な根拠があります。最大の要素は、競技場が位置する標高約450メートルという絶妙な立地条件です。
運動生理学の知見において、本格的な高地トレーニング(標高1,500m〜2,500m)は赤血球やヘモグロビン濃度の増加を促す一方、気圧の低下に伴いトレーニング強度が落ちるリスクを孕みます。これに対し、御殿場のような標高400m〜800m前後の環境は「準高地トレーニング」と呼ばれ、平地と同等のスピードを維持しながら適度な低圧・低酸素負荷を心肺機能に与えられる利点があります。取材に応じた実業団コーチは次のように証言しています。
「御殿場は夏場でも都心部に比べて気温が2〜4度低く、富士おろしの風が吹き抜けるため、乳酸が溜まる極限のスピード練習でも追い込める。標高2,000mの高地合宿に入る前段階の助走期間、あるいは本番直前のスピード研ぎ澄まし期において、これほど理想的なトラックは東日本でも極めて稀です」
全天候型ウレタン舗装が施された400mトラックは反発力と衝撃吸収のバランスに定評があり、箱根駅伝常連校の夏期合宿や記録会でも頻繁に活用されてきました。単なる噂やブランドイメージではなく、身体への生理学的恩恵と実用性の高さこそが、全国からランナーが引きも切らない真相です。