育児中の親にとって最も知りたい疑問が、鏡文字はいつまで続くかという時期の目安だ。文部科学省の小学校指導要領に準拠した教育現場の観察調査や認知発達研究の時系列データを俯瞰すると、明確な収束カーブが存在する。
ひらがなの書き始めである4歳前半では、文字の「形」を絵画のように捉えているため、鏡文字の出現頻度はピークに達する。5歳頃になると、周囲の文字環境(絵本、街の看板、親の手本)に触れる時間が増え、脳の左半球にある視覚的単語処理領域(VWFA:視覚性単語形成領域)が発達し始める。
小学校入学直後の6歳から7歳(小学1年生)にかけて、学校教育での反復書字練習が始まると、脳の鏡像不変性に対する抑制回路が急速に強化される。全国の小学校教育現場での調査によると、小学1年生の1学期段階では約15〜20%の児童に散発的な鏡文字が見られるものの、2学期末(秋〜冬)にはその割合は3%未満へと急減する。8歳(小学2年生)に達する頃には、ほぼ全ての児童が意識することなく正しい向きで文字を書けるようになる。
したがって、未就学児や小学1年生の前半段階で鏡文字が出現していても、焦って矯正塾に通わせたり、過度な特訓を課したりする必要は全くない。発達段階における自然なタイムスケジュールを信頼し、見守る姿勢が求められる。