ネット上の掲示板やSNSでは、「たいと」の84画を遥かに凌駕する「100画超え」「128画」「160画」果ては「172画」といった規格外の文字画像がしばしば拡散され、ユーザーの度肝を抜いてきました。これらの世界一画数が多い漢字の真相を学術的な視点から精査すると、明確な境界線が存在することが見えてきます。
代表的な例が、中国の民間信仰や道教の儀式において用いられてきた「道教符字(どうきょうふじ)」と呼ばれる護符文字です。雷神の力を宿すとされた「雷」を4つ重ね、さらに雲や風の記号を幾重にも結合させた128画や160画の文字は、日常のコミュニケーションや文章表現のために作られたものではなく、悪霊を退散させるための呪術的な記号(呪符)でした。近代言語学の定義において、これらは「言語を表記するための文字」というよりは「神仏と交信するための宗教的抽象図象」に分類されます。
さらにネット文化特有の現象として、個人が意図的に複雑な部首をコラージュして作り上げた「創作漢字」が、あたかも歴史的実在文字であるかのように語られるケースも後を絶ちません。172画とされるいわゆる「黄河クリア」系の図形などは、フォントデザインツール等で部首を幾重にも合成した現代のジョーク文字であることが判明しています。学術機関のデータベースや正史に記載された「辞書に載る文字」の限界線は、大漢和辞典等に収録された「𪚥(テツ:龍が4つで64画)」や「䨻(ホウ:雷が4つで52画)」であり、100画を超えるものは「言語の枠組み組みを超えた呪術図象・インターネットミーム」と峻別して捉えるのが正確な事実認識です。