任意入院を選択した当事者たちの手記や当事者会の報告、SNS上の告白を丹念に追うと、院内生活の快適さは「病棟の開放度」に大きく依存していることが浮かび上がってきます。
「精神科病棟に入れば誰とも会わずに静養できると思っていたが、持ち込める荷物の制限が想像以上に厳しかった」と語る30代女性の手記では、任意入院スマホ制限と面会の実態が生々しく記されています。任意入院であれば原則として通信や面会の自由は保障されるべきですが、病院側の管理内規や盗撮・情報流出防止の観点から、Wi-Fi環境の欠如や充電器コードの預かり(自己収縮・事故防止)、1日の使用可能時間制限(1〜2時間のみ)を課す医療機関は依然として珍しくありません。
さらに現場で最も緊迫した事態を生むのが、任意入院から医療保護入院切り替え理由にまつわるトラブルです。閉鎖的な環境や他患との人間関係に耐えかねた患者が「今すぐ退院させてほしい」と強く要求した際、指定医が「外に出れば自傷のおそれがある」「病識の欠如による急性悪化」と判断すると、前述の72時間制限のあいだに家族へ連絡が入ります。そこで家族が医療保護入院の同意書に署名すれば、本人の意志に関わらず強制入院へとステータスが塗り替えられてしまうのです。
家族側としても「いま退院されて家で命を絶たれたら困る」という恐怖感から同意書にサインせざるを得ず、これが患者と家族の深刻な心理的断絶を招く引き金となります。