SNSや知恵袋、ランニングコミュニティを調査すると、足の甲の痛みに苦しむ人々の切実な告白が溢れています。「痛みを我慢してフルマラソンを完走したら、翌朝立ち上がれなくなり全治3カ月と宣告された」「大会直前だったため痛み止めを飲んで走り続けたら骨が完全に折れていた」という後悔の声は枚挙にいとまがありません。
こうした悲劇の根底には、日本のアスレチック環境に長年根付いてきた「痛みを我慢して耐え忍ぶことこそが美徳」という精神論的バイアスが存在します。骨折とは通常、激しい転倒や事故で起きるものという先入観があるため、自らの足で歩行できる段階では「骨折している」という事実を心理的に受け入れられない認知の歪み(正常性バイアス)が働いてしまうのです。
さらに臨床現場の理学療法士が指摘するのは、代表的なランニング障害としての背景です。足の甲疲労骨折を発症するアスリートの約70%以上に、以下の共通項が確認されています。
- 月間走行距離を前月比で30%以上急激に引き上げた
- 薄底でクッション性の極めて低いレーシングシューズを日常のロード練習で常用していた
- 土踏まずが潰れた「扁平足(オーバープロネーション)」または甲が高く衝撃を逃がせない「ハイアーチ」
- 硬いアスファルトやコンクリートコースばかりを走行していた
骨は本来、運動の刺激を受けて微細な破壊と再生を繰り返しながら強度を高めます。しかし、骨の破壊(破骨細胞の働き)に対して修復(骨芽細胞の働き)が追いつかない限界値を超えたとき、構造疲労として足の甲が音を立てて崩れ去るのです。