区分所有者が果たすべき義務を甘く見積もっていた結果として、管理現場で最も深刻化するのが管理費滞納トラブルの真相です。
国土交通省の「マンション総合調査」などの公的データによると、全体の約2割から3割のマンションで何らかの管理費・修繕積立金の滞納が発生しています。初期の数カ月は督促状の送付や電話連絡で済むものの、滞納期間が半年から1年を超えると、管理組合側は弁護士を介入させ、支払督促や少額訴訟などの法的手段に踏み切らざるを得なくなります。
管理組合の理事経験者が現場の取材で吐露した証言は生々しいものです。
「『今は手元にお金がないから待ってくれ』『賃借人が家賃を振り込まないから払えない』と言い訳を重ねる区分所有者が後を絶ちません。しかし、共用部分の電気代やエレベーターの保守点検費用は毎日発生している。一人の滞納を許せば、他の真面目な住民が負担を肩代わりしているのと同じなのです」
滞納が長期化し回収不能と判断された場合、区分所有法第7条に定められた「先取特権」に基づき、管理組合は対象の専有部分や家財を差し押さえることができます。さらに究極の法的措置として発動されるのが、区分所有法第59条に基づく競売請求です。これは、著しく共同の利益に反する区分所有者に対し、総会の特別決議を経て裁判所に専有部分の強制競売を申し立て、強制的にマンションから退去・排除する極めて強力な権利です。
また、金銭面だけでなく、居住態度における共同の利益に反する行為も厳格に処罰されます。たとえば専有部分での違法民泊の営業、ゴミ屋敷化による異臭や害虫の発生、構造壁の勝手な解体、騒音トラブルなどがこれに該当します。この問題において重要なのが占有者との法的関係です。区分所有法第46条に基づき、規約や総会決議は部屋を借りている賃借人にも効力が及びます。賃借人が迷惑行為を止めない場合、管理組合は区分所有者に対して是正を命じるだけでなく、賃借人に対して直接「専有部分の使用停止」や「賃貸借契約の解除・部屋の引渡し」を裁判所へ請求する権利を有しています。