重光武雄という経営者の本質は、どこまでも泥臭い「現場第一主義」と「品質への狂気」にありました。当時の役員や工場関係者の証言によると、彼はどれほど会社が巨大化しても、新製品の試食やパッケージデザインのチェックを自ら行い、納得がいくまで何十回もやり直させたといいます。
ロッテの看板商品である「ガーナミルクチョコレート」や「コアラのマーチ」「雪見だいふく」の誕生時にも、武雄の鋭い直感と技術陣への高い要求が反映されていました。「スイスの味を日本で再現する」と決めた際は、本場から技師を招致し、原料の配合割合をミリ単位で突き詰めたエピソードは有名です。
【重光武雄が遺した経営哲学・名言】
「事業において最も重要なのは信用であり、信用を裏切らない唯一の道は最高の品質を提供し続けることだ」
「机の上の数字を見るな。売り場を見ろ、現場の空気を感じろ。答えはすべてそこにある」
「一度やると決めたら、周囲が諦めても自分だけは絶対に退くな」
一方で、そのカリスマ性の裏返しとして、組織内では武雄の意向に逆らえない強烈なトップダウン体制が常態化していました。社内では「総括会長への報告資料は一言一句間違えられない」という張り詰めた空気が漂い、議論を交わすよりも創業者の顔色を窺うイエスマンが重用される土壌が醸成されていった側面も否定できません。