篠山紀信の膨大な仕事の中でも、篠山紀信 代表作として必ず挙げられるのが本作と、その直後に刊行された『Accidents Series 1 樋口可南子 + 篠山紀信』です。しかし、名作の誕生は決して平坦な道のりではありませんでした。
数々の証言によって明かされている樋口可南子 篠山紀信 撮影秘話において特筆すべきは、撮影現場の張り詰めた緊張感と、篠山特有の軽やかなディレクションの妙です。南国バリ島の強烈なスコールや生い茂る熱帯植物の中、篠山は被写体のプライドを傷つけることなく、むしろ彼女自身が気づいていない無垢な官能性を瞬時に切り取っていきました。樋口は後に「篠山さんのカメラの前に立つと、服を着ていることの方が不自然に感じられるほど、自然体でいられた」と回想しています。
2026年1月4日、篠山が83歳でこの世を去った際、樋口が寄せた言葉には偽らざる敬意が溢れていました。
「篠山さんとの現場はいつも驚きと喜びに満ちていました。いちばん綺麗に撮ってくださったのは篠山さんです」
(関係者取材および主要メディア追悼報道より)
この樋口可南子 篠山紀信 追悼コメントは、長年にわたり被写体として向き合ってきた二人の魂の交感を端的に表しています。篠山紀信という稀代の写真家は、ただシャッターを切るのではなく、相手が人生で最も輝く瞬間を永遠に固定する稀有な才能を持っていたのです。