昭和史を振り返ると、「三億円事件」や「朝日新聞阪神支局襲撃事件」など、未解決のまま時効を迎えた重大事件が複数存在します。その一覧の中でも、グリコ・森永事件の特異性は「一般消費者を巻き込む無差別テロの形態を取ったこと」にあります。
この事件を契機に、日本の産業界と治安体制は劇的な変化を遂げました。全国の食品メーカーは、一度開封すると元に戻せない「セーフティシール」や密閉包装を標準採用するようになり、防犯カメラの街頭配備が一気に加速しました。
また、警察組織においても広域捜査指導官制度の創設や科学捜査研究所の体制強化など、都道府県警の枠組みを超えた捜査ネットワークが整備される契機となりました。未解決という痛恨の結末は、現代日本の安全管理システムの基盤を築く大きな教訓となっています。