萩本欽一の人生において、世間を最も驚かせた挑戦のひとつが73歳での大学受験と進学です。2015年春、萩本は一般入試を経て駒澤大学仏教学部に入学しました。
多忙を極めた青春時代に高校(東京都立駒場高等学校定時制)を卒業したものの、「一度でいいから大学で本格的な勉強をしてみたい」という思いを長年抱き続けていました。入学後は特別扱いを一切断り、一般の若者たちと同じ講堂でノートを取り、学食で昼食を食べ、課題レポートの提出に追われる日々を送りました。
なぜ仏教学部を選んだのかについて、萩本は手記の中で「仏教の教えには、笑いや人間関係の根底に通じる深い哲学があると感じたから」と明かしています。単なる話題作りや認知症予防の範疇を超え、知的好奇心に突き動かされた真剣な学びの姿勢は、多くのシニア層に勇気を与えました。
4年後の2019年、萩本は単位取得や卒業証書にこだわることなく大学を自主退学しました。この選択について「学びたいと感じていた知的好奇心は十分に満たされた。今度はこの学びを次の仕事や新しい挑戦に還元する段階に入った」と語っており、形式的な学歴ではなく実質的な知の探求を目的としていたことが窺えます。