山の日が施行されて以降、全国各地では毎年、日本山岳会や地方自治体が主導する全国大会をはじめとする多彩なトレッキングイベントが開催されています。しかし、観光地や山岳現場のリアルな実態に目を向けると、理想と現場の受容力との間に生じている摩擦も浮き彫りになっています。
山小屋関係者や登山ガイドへの取材調査では、山の日とお盆休みが重なるこの期間、北アルプスや八ヶ岳などの主要山域では宿泊予約が数分で埋まり、テント場はすし詰め状態に陥るケースが常態化しています。近年導入が進んだ富士山の通行規制や入山管理手数料制度(2026年より本格運用、2026年現在も定着)に見られるように、オーバーツーリズムによる環境破壊や遭難事故の急増は深刻な社会問題です。
SNSや登山コミュニティにおける一般利用者の声を集約すると、実態は大きく二極化しています。
- 熱心な登山愛好家層:「山の日前後はハイシーズンすぎて山小屋の予約すら取れない」「登山口周辺の駐車場が前夜から満車になり、登山道では大渋滞が発生してペースが乱れるため、むしろこの時期は低山を避けて日程をずらす」
- 都市部の一般ファミリー層:「山に登るわけではないが、お盆の帰省ラッシュを回避するために8月11日から前倒しで実家へ帰れるのが助かる」「単なるお盆休みの拡大トリガーとして機能している」
祝日法の理念である「山に親しむ」という純粋な登山文化の普及と、過密化する観光インフラの負荷分散という二律背反の課題が、施行から10年を経た現在も現場を悩ませ続けています。