「おとぎ話の王子でも、昔はとても食べられない……」という愛らしいフレーズで親しまれる童謡『アイスクリームのうた』。誰もが一度は口ずさんだ経験を持つこの楽曲について、「歌っている女性歌手の名前が出てこない」「原曲は誰が歌っていたのか」という疑問がネット上で頻繁に交わされています。
この名作童謡のオリジナルシンガーは、日本のジャズボーカル界草分けのひとりである旗照夫(はた てるお)です。バックコーラスを「パイプのけむり」が務め、1962年6月〜7月にNHKの音楽番組『みんなのうた』で初めて電波に乗りました。作詞を手掛けたのは児童文学作家のさとうよしみ、作曲は名匠・服部公一。アメリカで誕生したアイスクリームが日本に伝来した歴史的背景を、子供たちにも分かりやすい童話仕立てのリズムに乗せて表現しています。
原曲が男性ジャズシンガーによる洗練されたスウィング感を持っていたのに対し、多くの日本人の記憶に「女性の声」として焼き付いている理由には、NHK教育テレビ(Eテレ)の長寿番組『おかあさんといっしょ』における歴代「うたのおねえさん」たちのカバーがあります。神崎ゆう子やはいだしょうこ、森みゆき、さらにはファミリーソングの第一人者である山野さと子らがそれぞれの表現で吹き込んだ音源が幼稚園や保育園、知育教材で広く浸透した結果、聴く人の世代ごとに異なる歌声が原体験として刻まれる構造が生まれました。