この疑惑が決定的な社会的転換点を迎えたのは、ジャーナリスト・石井妙子氏による徹底した調査報道の結実であるノンフィクション大作『女帝 小池百合子』の登場だった。同書は、緻密な証言の積み重ねと現地資料の照合を通じて、小池氏が築き上げてきた華麗なる経歴の虚構性を白日の下に晒した。
文藝春秋が世に問うた数々のスクープは、単なるゴシップの領域を遥かに凌駕していた。かつてカイロで寝食を共にした日本人女性の詳細な日記や生々しい手紙、そして当時の暮らしぶり。それらは、小池氏が語り続けてきた「カイロ大学を正規の手続きで優秀な成績をもって卒業した」というナラティブを根底から覆す破壊力を持っていた。
石井氏が切り拓いた調査報道の地平は、権力者への忖度を排し、事実のみを武器に巨大な権力像へと肉薄するノンフィクションの真髄を示した。それは、作られたカリスマ性に熱狂する社会に対する痛烈な警鐘でもあった。