映画界に進出する前夜、彼の手がけた宇多田ヒカルの一連のミュージックビデオは、平成のポップカルチャーにおける金字塔となった。『FINAL DISTANCE』や『traveling』で見せた、色彩の乱舞とアヴァンギャルドな世界観。わずか数分の映像の中に、神話的なストーリーテリングを凝縮させる手腕は既に突出していた。
その鮮烈な作家性は、監督第2作となる『GOEMON』でより過剰なまでに結実する。織田信長や豊臣秀吉の時代を独自の解釈で再構築したダーク・ファンタジー。絢爛豪華な美術とCGを融合させ、戦国の世を疾走する大泥棒の姿を描いた本作は、単なる時代劇の枠を完全に踏み越えていた。リアリズムの追求ではなく、心象風景をスクリーンに具現化すること。それこそが彼の徹底した美学だった。