洋館の設計を担ったのは、帝国ホテル新館などを手掛けた近代建築の鬼才、高橋貞太郎だ。彼が選んだのは、イギリス中世後期に隆盛を極めたチューダー様式。急勾配の屋根、スクラッチタイルと化粧石の巧みな対比、煙突のシルエットが織りなす外観は、圧倒的な存在感を放つ。
室内へ進むと、意匠の多様さに息を呑む。サロンは典雅なルネサンス様式、食堂は重厚なゴシック調、そして家族の私室にはアール・デコの影響が色濃く漂う。高橋貞太郎は西洋の伝統意匠を単に模倣するのではなく、日本の風土と近代貴族の生活動線に合わせて再構築した。細部の金物ひとつに至るまで徹底的にこだわり抜かれた美意識は、まさに近代洋風建築の到達点といえる。