本作が目指す地点は、従来のジャンル映画の枠組みを大きく突き抜けている。暗鬱な都市の影、背徳感に満ちた登場人物たち、そして逃げ場のない絶望感。それら従来のネオ・ノワールが持っていた様式美を継承しつつも、息をのむような鮮烈なカラーパレットと現代的なサスペンス・スリラーの展開が見事に融合している。
鋭利な視線で人間の闇を描く手法は、ハードボイルドの系譜を受け継ぎながらもまったく新しい。かつてデヴィッド・フィンチャーが『セブン』で見せた冷徹な精密さ、そしてクエンティン・タランティーノが『パルプ・フィクション』で提示した予測不能なダイナミズム。二人の巨匠が築いた遺伝子を感じさせつつ、それを新たな次元へと昇華させている点こそが、本作の真骨頂だ。