藤崎竜によるコミカライズが発表された際、ファンの間で走った衝撃は並大抵のものではありませんでした。その最大の要因は、従来の「銀英伝」が持っていた耽美かつクラシカルなスペースオペラのパブリックイメージを、藤崎竜特有のポップでアバンギャルドなSFセンスで大胆に再構築した点にあります。
銀河英雄伝説 藤崎竜に対するネットの反応を振り返ると、連載序盤は「世界観の重厚さが損なわれているのではないか」「キャラクターの見た目が奇抜すぎる」といった否定的な意見と、「少年漫画的なケレン味があって面白い」「難解な政治劇が圧倒的に読みやすくなった」という絶賛の声が激しくぶつかり合いました。とりわけ、1980年代の石黒昇監督版アニメや道原かつみによる美麗なコミカライズ版に親しんできた世代にとっては、視覚的なカルチャーショックが極めて大きかったと言えます。
しかし、単行本の刊行が進み、アムリッツァ星域会戦やリップシュタット戦役などの大一番が描かれるにつれ、フジリュー版銀英伝の評判は確固たる称賛へとシフトしていきました。奇抜なガジェットの奥底に流れているのは、原作の骨子である「専制政治と民主共和制の対比」や「人間の愚行と気高さ」に対する真摯なアプローチでした。単なる奇をてらった改変ではなく、漫画という媒体で原作の面白さを最大限に伝えるための計算された演出だったことが、多くの読者に浸透していったのです。