個室空間で供される肉そのもののクオリティも、かつてない高みに達している。肉の価値を測る際、一般的には日本食肉格付協会が定める歩留等級と肉質等級(いわゆるA5ランクなど)が指標とされてきた。しかし、真の肉通たちが求めるのは単なる霜降りの度合いではない。
農林水産省が推進する和牛遺伝資源の保護とブランド化の流れの中で、職人たちが着目しているのは脂の「融点」と「赤身の旨味の深さ」だ。特に伝統的な肥育技術で育てられた松阪牛の処女牛や、純血の血統を守り抜く黒毛和牛の雌牛は、人肌で溶け出すほど融点が低い不飽和脂肪酸を豊富に含む。
熟練の職人が部位ごとの筋膜をミリ単位でトリミングし、個室専属の焼き手が絶妙な火入れを行うことで、サシの重たさを感じさせない軽やかな口溶けが完成する。この一連の体験こそが、エグゼクティブを唸らせる現代焼肉の真骨頂だ。