入学手続きの書類を開いた瞬間、現実は容赦なく家計に迫る。学費や諸経費の合計は初年度だけで約160万〜200万円前後に達し、これに任意とされる寄付金や学校債が加わる。実質的な支出は初年度で300万円を超えるケースも珍しくない。しかも、この学費負担は慶應義塾大学を卒業するまでの最低16年間、途切れることなく続く。
経済的負担以上に親たちを戦慄させるのが、保護者同士の濃密なコミュニティだ。幼稚舎では6年間担任が変わらない「持ち上がり制」が採用されている。これは子供だけでなく、親たちの関係性も6年間固定されることを意味する。代々慶應の医師家系や上場企業オーナー、著名人が名を連ねるクラス会で、一般的なサラリーマン家庭が感じる居心地の悪さは想像を絶する。
「週末の家族ぐるみの付き合いや別荘への招待、子供の習い事にかける桁違いの費用など、価値観のギャップに眩暈がした」と、ある保護者は明かす。背伸びをし続ければ家計が破綻し、距離を置きすぎればコミュニティから孤立しかねないという、極めて繊細な舵取りが日常的に求められる。