「ON砲」という呼称は、王貞治(Oh)の「O」と長嶋茂雄(Nagashima)の「N」のイニシャルを組み合わせた造語です。1960年代初頭、巨人のクリーンアップを担ったふたりの凄まじい破壊力を表す言葉としてメディアに定着し、プロ野球界における最強コンビの代名詞となりました。
ON砲が放った最大のインパクトは、読売ジャイアンツの前人未到の日本シリーズ9連覇(V9時代:1965年〜1973年)において遺憾なく発揮されました。3番・王貞治、4番・長嶋茂雄という並びは、対戦相手のバッテリーにとって逃げ場のない絶望そのものでした。ふたりが同じ試合で本塁打を放つ「アベック本塁打」は通算106回を数え、その間のチーム成績は80勝25敗1分・勝率.762という驚異的な勝率を叩き出しています。
昭和プロ野球のレジェンド秘話として語り継がれるのは、当時の他球団バッテリーが直面した究極の二者択一です。「王を敬遠して歩かせても、後ろに控える長嶋に手痛い一打を浴び、長嶋を警戒すれば王にスタンドへ運ばれる」という構造は、川上哲治監督が標榜した組織野球の絶対的な核として機能していました。