佐渡ヶ嶽部屋の歴史において最大のハイライトの一つとなったのが、親方の愛息である佐渡ヶ嶽親方の息子、琴櫻将傑(ことざくら まさかつ)の大関昇進劇です。大相撲担当記者が当時の取材現場をこう振り返ります。「初場所で13勝を挙げ大関昇進を決定づけた直後、師匠である親方は報道陣の前で終始冷静さを保っていましたが、控え室の奥で息子と二人きりになった瞬間、目頭を熱くしてその肩を力強く抱きしめていました」。
入門当初は父の現役名である「琴ノ若」を名乗り、恵まれた体格を生かした右四つの相撲で着実に番付を駆け上がりました。しかし、その過程は決して順風満帆なものではありませんでした。名門部屋の跡取り息子という宿命は、時に「勝って当たり前、負ければ親の七光り」という過酷なプレッシャーとなって青年の肩にのしかかります。
その重圧を跳ね返し、大関の地位を掴み取った息子は、さらなる覚悟の証として、祖父である第53代横綱・琴櫻の四股名を継承しました。佐渡ヶ嶽親方と琴櫻、そして先代へと繋がる三代の絆は、単なる血縁を超えた「魂の継承」として相撲史に深く刻まれることとなったのです。