三重県出身の西川昌希氏は、三重県立石薬師高等学校を卒業後、名門・やまと競艇学校(現・ボートレーサー養成所)を経て第104期生として2009年5月にプロデビューを果たしました。通算12回の優勝を数え、選ばれし強豪のみが集う最高峰グレード「SGボートレースクラシック」にも出場するなど、艇界を牽引するトップレーサーへと登り詰めました。
しかし、その華々しい栄光の裏側で、前代未聞の競走法違反行為が進行していました。事件の発覚は2019年7月、滋賀県のボートレースびわこで開催された一般戦でした。圧倒的な1番人気に推されていた西川選手が不可解な旋回を見せて着外に沈み、3連単で高額配当が飛び出す異常事態が発生。公営競技を監視する当局の調査によって、組織的な八百長の実態が白日のもとに晒されました。
法廷で明かされた不正の手口は極めて狡猾でした。外部との通信が厳格に禁止されている選手宿舎に、私物のDVDプレーヤーの内部を空洞化させて小型スマートフォンを隠し持ち込み、通信検査の盲点を突いて宿舎内に潜入させていたのです。その通信相手となったのが、共犯者として逮捕された親族の増川遵受刑者(元暴力団関係者)でした。
レース前、西川氏は暗号化したメッセージアプリ等を用いて「どの艇を先行させ、自らは何着に落ちるか」を親族へ伝達。競艇特有の「ターンマークを意図的に外して流れる」「コーナーで不自然に減速して後続を先に行かせる」といった高等技術を逆用し、人気を集めた自艇を着外へと沈めました。親族側はその情報を元に3連単の穴舟券を大量購入し、莫大な払戻金を手にする構造を作り上げていたのです。