「譲位」を一言でわかりやすく定義するならば、「天皇が生前に皇位を後継者へ譲ること」を指します。漢字の通り「位を譲る」能動的な行為であり、日本の皇室史において古くから用いられてきた伝統的・格式の高い用語です。
混同されやすい言葉に「退位」と「禅譲(ぜんじょう)」がありますが、法制上の扱いと歴史的文脈において明確な違いが存在します。
まず「退位」は、君主や皇帝が自らその地位を退く行為全般を指す包括的な客観的用語です。必ずしも「誰に位を譲るか」という行為者を限定せず、一方的に地位を離れる場合(退役や廃位に近いニュアンスを含む場合)にも用いられます。現行の法規上、2017年に成立した法律が「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」と名付けられたのも、法技術的・中立的な表現として「退位」が採用されたためです。
一方、中国の王朝史に由来する「禅譲」は、徳のある有能な人物に王朝の支配権・帝位を譲る政治的行為を意味します。ここでの決定的な違いは、禅譲が「血縁関係のない他姓の有徳者へ王朝ごと交代する(易姓革命)」ケースを含むのに対し、日本の皇位継承は一貫して皇統(同一の血統・万世一系)の中で引き継がれる点です。したがって、日本の天皇が生前に皇太子へ位を譲る行為を「禅譲」と呼ぶのは学術的・歴史的に不適切とされています。