タイパ(タイムパフォーマンス)が重視される社会において、同人誌制作は極めて非効率な作業だ。プロットを練り、ネームを切り、何十時間もかけて作画する。それだけの労力をかけても、利益が出る保証はどこにもない。赤字になることの方が圧倒的に多いのが現実だ。
それでも彼らがペンを握り続けるのは、アルゴリズムに支配されたSNSのタイムラインから逃れるためでもある。数字や「いいね」の数だけでは測れない、生身の人間同士の濃密なコミュニケーションが即売会の現場にはある。手渡しで本を売り買いする瞬間の温度感こそが、デジタル社会で乾いた心を潤す特効薬なのだ。