時計の針を巻き戻すと、彼を襲った最大の転機は2017年1月に週刊誌『週刊新潮』によって報じられた女性問題でした。いわゆる「アパホテル騒動」と呼ばれるこのスキャンダルは、密会場所に特定の大手ビジネスホテルチェーンを頻繁に利用していたこと、さらには宿泊ポイントを熱心に貯めていたという生々しいディテールが公になり、単なる不倫報道を超えて世間の失笑と猛烈なバッシングを巻き起こしました。
報道直後、世論の反発は凄まじく、出演予定だったドラマや情報番組は軒並み降板となり、約半年にわたる芸能活動自粛を余儀なくされました。当時、誰もが「袴田吉彦の俳優生命は完全に絶たれた」と確信していました。しかし、その絶望的な空気を一変させたのが、同年大晦日に放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 大晦日年越しスペシャル 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』への電撃出演でした。
袴田は番組内で「変態仮面」を模した「アパ不倫仮面」に扮し、袴田吉彦本人として登場。「ポイント稼ぎ」や「不倫」という最も触れられたくない傷口を自ら全力で笑いに昇華させる姿は、日本中のお茶の間に強烈な衝撃を与えました。現場の関係者は当時の様子をこう振り返ります。
「オファーを受けた当時の袴田さんは、まさに背水の陣でした。『この役を受けてスベったら本当に芸能界を去るしかない』という極限のプレッシャーの中、リハーサルから一切の妥協なく振り切った芝居を見せました。松本人志さんをはじめとするダウンタウンの2人がその覚悟を真正面から受け止め、笑いとして成立させたことで、世間の空気は『生理的嫌悪』から『そこまでやるなら応援したい』という同情と称賛へと劇的にシフトしたのです」
この一件は、日本の芸能史における危機管理PRの最大のターニングポイントとして今なお語り継がれています。言い訳をせず、自らの愚行を完全に認め、エンターテインメントの糧として差し出した潔さが、彼にセカンドチャンスをもたらす決定打となりました。