「しっかり8時間寝ているのに疲れが取れない」「夜中にちょっとした音で目が覚めてしまう」。こうした症状の裏側には、単なる精神的ストレスを超えた生物学的な要因が存在する。世界的な睡眠科学の第一人者である筑波大学の柳沢正史教授らの研究チームをはじめ、国際的な医学論文データベースPubMedに登録された最新研究群が解明したのは、脳内の覚醒物質「オレキシン」や深部体温の微小な乱れが引き起こす「微小覚醒(Micro-arousal)」の存在だ。
微小覚醒とは、本人は起きている自覚がないまま脳だけが数秒から数分間リセットされる現象を指す。これが一晩に何度も繰り返されると、脳は「深いノンレム睡眠(ステージ3)」に到達できず、どれほど布団の中にいても脳細胞の修復が進まない。つまり、「眠りが浅い」の正体は時間の不足ではなく、脳が覚醒モードから完全にオフに切り替わらない構造的な不全なのだ。