この奇跡的なキャスティングは、どのようにして実現したのか。
実は、企画立ち上げ当初は別の俳優の名前が挙がっていたという。しかし、プロデューサーが「今の日本映画界に本当に必要なのは、スクリーンを圧倒する『男の背中』だ」と強く主張。ダメ元で二人に同時にオファーを出したのが始まりだった。
「どちらか一方が断れば、この企画自体を白紙にする」という極秘の条件のもと、交渉は進められた。先に動いたのは萩原だったという。「木村がやるなら、俺に断る理由はない」。その返答を聞いた木村もまた、「聖人が現場にいるなら、面白い現場になる」と快諾した。32年間の沈黙は、信頼という名の熟成期間だったのだ。