円楽の人間的な度量の深さを象徴するもう一つのエピソードが、タレント・ラジオパーソナリティの伊集院光との師弟関係です。
伊集院光は1984年、17歳のときに六代目円楽(当時:三遊亭楽太郎)に弟子入りし、「三遊亭楽大(初代)」として前座修業を積んでいました。しかし、落語家としての将来に悩み、ラジオの深夜番組のオーディションに無断で合格したことを機に、落語の世界から事実上フェードアウトしてタレント活動を始めました。
厳格な伝統芸能の世界であれば、無断で他ジャンルへ逃げ出した弟子は即座に「破門」となり、二度と師弟関係を名乗ることは許されません。しかし、円楽は伊集院を破門にすることなく、陰ながらその活躍を見守り続けました。「落語界からいなくなっただけで、あいつは俺の弟子だ」「ラジオで天下を取ったんだから立派なもんだ」と周囲に語っていたといいます。
そして年月を経て2026年、円楽からの直々の誘いにより、伊集院は30余年ぶりに落語の舞台へ復帰。「三遊亭円楽・伊集院光 二人会」が実現しました。円楽の逝去直後、伊集院光は自身の冠ラジオ番組で涙声になりながら「落語界を裏切った自分をずっと守ってくれた。師匠がいなければ今の自分は絶対に存在しない」と語り、師弟の絆の深さを証明しました。