玉ねぎの全重量のうち、約90%は水分で構成されています。中玉3個(約600g)を使えば、実に540ml以上の水分が野菜の中に閉じ込められている計算です。通常のカレーで加える水の量が1皿あたり100〜150ml程度であることを考えれば、野菜の水分だけで十分にスープ状になる理由が分かります。
ポイントとなるのは、玉ねぎの細胞壁をいかに破壊して水分を外に浸出させるかという点です。長時間フライパンに張り付いて炒め続ける重労働をイメージしがちですが、無水調理における玉ねぎを飴色に炒めないコツは「塩を振って弱火でじっくり蒸し煮にする」ことにあります。塩をふりかけることで浸透圧が働き、細胞膜から一気に水分が溢れ出します。さらに鍋内部で発生した蒸気が対流し、自身の水分で蒸される過程で加熱分解が進み、炒めずとも深い甘みと旨味が引き出されます。
玉ねぎに含まれる辛味成分(硫化アリル)は加熱によって甘味成分であるプロピルメルカプタンなどに変化し、グルタミン酸由来の旨味と一体化します。これが、水で薄めない無水カレー特有の圧倒的なコクの正体です。