昔の駅前には、独特の匂いがあった。
ディーゼル気動車が吐き出す重油の煙。冷たい潮風。そして、駅前にひしめき合っていた食堂から漂う、ホタテやイカを焼く醤油の香ばしい香りだ。長距離夜行急行「利尻」から降り立った旅人たちは、凍える体を丸めながら、これらの食堂へ駆け込んだものだった。
現在、駅周辺はすっきりと整備され、駐車場やロータリーが広がる。かつての混沌とした、どこか怪しげでエネルギッシュな港町の空気感は薄れ、スマートな地方都市の顔を見せている。便利さと引き換えに失われた、あの五感を刺激する旅の記憶を懐かしむ声は、今も絶えない。