アメリカの真の食の面白さは、大都市の有名店ではなく地方のロードサイドにこそ眠っている。その代表格が、ヒッコリーやオークの木くずで肉を何時間もじっくり燻製にするテキサスバーベキューだ。スパイスを擦り込んだ牛ブリスケット(胸肉)は、ナイフがスッと入るほど柔らかく、香ばしい燻煙の香りが口いっぱいに広がる。これは単なる調理法ではなく、何世代にもわたって受け継がれてきた職人技の領域である。
一方で、アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人コミュニティから生まれたソウルフードも忘れてはならない。フライドチキンやカラーグリーン(ケールに似た葉野菜の煮込み)、コーンブレッドなど、厳しい歴史の中で工夫を重ねて育まれた料理には、温かみと深い味わいが凝縮されている。こうした地域密着型のB級グルメは、今や全米のグルメガイドでも高い評価を獲得しており、その土地の歴史を味わう最高の文化体験として親しまれている。