河川に擬人化された兄弟の序列をつける風習は、古来の日本人が自然の猛威に対して抱いた畏敬の念の表れです。坂東太郎の由来と意味を紐解くと、「坂東(関東地方の古称)にある日本で一番大きな川、および最も暴れ狂う長男」という意味が込められています。
古来、地域を代表する大河は「太郎」「次郎」「三郎」と擬人化されてきました。その序列の頂点に君臨するのが利根川であり、坂東太郎と呼ばれる理由は、単に川の規模が大きいからだけではありません。一度大雨が降れば流路を自在に変え、田畑や集落を容赦なく飲み込む圧倒的な破壊力を持っていたため、恐れと親しみを込めて「暴れ川の長男」に見立てられたのです。
この命名体系は全国の河川比較にも見られ、西日本の大河である筑紫次郎と吉野三郎がこれに続きます。筑紫次郎は九州北部を潤す筑後川(福岡・佐賀)、吉野三郎は四国の険しい山間を抜ける吉野川(徳島)を指します。いずれも急流や集中豪雨によって甚大な氾濫を繰り返してきた歴史を持ち、これら三河川が日本三大暴れ川として日本治水史にその名を深く刻んでいます。