なぜ米軍は、これほど正確な時間と場所で山本長官の乗機を待ち伏せできたのか。その最大の理由は、米軍による徹底的な暗号解読にありました。
視察の5日前である4月13日、第八艦隊司令部から関係各部に向けて「長官の前線視察計画」を知らせる極秘電報が発信されました。この電文には、発着時刻、使用機数、護衛戦闘機の数、さらには着用する軍服の種類に至るまで、驚くほど綿密なタイムスケジュールが記載されていたのです。海軍側は自慢の「D暗号(JN-25)」を使っていたため解読される心配はないと過信していました。
しかし、ハワイおよび南太平洋の米海軍情報部は、すでにこの暗号のかなりの部分を解読していました。電文を入手した太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツは、フランクリン・ルーズベルト大統領の承認を取り付け、山本五十六の暗殺を目的としたコードネーム「ヴェンジェンス作戦」(復讐作戦)を電撃的に決裁します。
航続距離の長い双発戦闘機P-38ライトニング16機がガダルカナル島のヘンダーソン基地から発進し、無線封鎖と超低空飛行を保ちながら約650キロの迂回ルートを飛行。秒単位で計算された迎撃計画は見事に的中し、迎撃地点で両部隊は寸分の狂いもなく交差することになりました。