船上の作業はまさに分単位の精度が求められる。数百本に及ぶ枝縄を数キロメートルにわたって流し込み、数時間後に引き揚げる作業は、冷たい海風が吹き荒れる中でも一切の妥協が許されない。一瞬の油断が仕掛けの絡まりや致命的な怪我につながるからだ。
近年、水産業界全体を悩ませてきた後継者不足だが、この船では変化の兆しが見られる。20代から30代の若手船員がベテランの技を貪欲に吸収し、現場のデジタル化と職人技の融合を推し進めている。縄を手繰り寄せる手つき、魚の脱血(血抜き)や神経締めを行う手際の良さ——それらはデジタル画面からは学べない、海の上でしか伝承できない無形の資産である。