時計の針を2000年代初頭の虎ノ門へと戻そう。ジャズが流れるスタイリッシュな空間に立ち食いスタイル、そして極太の蕎麦にドカッと盛られた甘辛い牛肉、生卵、そして大量のラー油――。「港屋」の登場は、それまでの「蕎麦はあっさりとした軽食」という固定観念を根底から打ち砕いた。
立ち働いた後の疲れた体には、繊細な出汁だけでは少し物足りない。ガツンと力強いパンチが欲しい。そんな都市で戦うビジネスパーソンたちの切実な欲求に、ラー油の持つ強烈な油脂分と刺激が見事にはまった。ジャンクでありながら、どこか洗練されている。この絶妙なバランスこそが、熱狂的な中毒者を生み出す原動力となったのだ。