なぜタイトルは昆虫の「蛍」ではなく「火垂る」と表記されているのか。その答えもまた、ビジュアルデザインの中に周到に仕込まれている。画面内に散りばめられた光の粒を観察すると、2種類の異なる形状が存在することに気づくはずだ。
ひとつは、丸く柔らかく発光するホタルの光。そしてもうひとつは、上部から斜め下に向かって引き伸ばされた、涙型あるいは雫型の光だ。物理的な軌跡を描いて流れるその形状は、空襲によって降り注ぐ「焼夷弾の油脂火薬」そのものである。火が垂れると書く「火垂る」の名は、兄妹を包む優しき光であり、同時に家と命を焼き尽くす死の雨でもあった。