お菓子作りの現場で最も頻出する疑問が、「無塩バター有塩バター違いは何か、そして有塩バターをそのまま使って良いのか」という点です。日本農林規格(JAS)および乳等省令において、両者の乳脂肪分基準はいずれも「80.0%以上」と定められており、油脂としての基本組成に大きな差はありません。決定的な違いは、製造工程で約1.5%(製品により1.3〜1.8%前後)の食塩が添加されているかどうかにあります。
無塩バター(正確には「食塩不使用バター」)がお菓子作りの標準とされる理由は、塩分によるグルテン形成の促進やイースト菌の活動抑制を防ぎ、パティシエが意図した繊細な甘みと塩味のバランスをミリグラム単位でコントロールするためです。しかし、家庭で楽しむ焼き菓子であれば、有塩バター代用分量の計算と塩分コントロールを行うことで、十分においしく仕上げることが可能です。
有塩バターを食塩不使用バター代替品として使う場合の計算式と塩分調整レシピのルールは極めてシンプルです。
【有塩バター代用時の塩分計算式】
・有塩バター100gあたりの含まれる塩分 = 約1.5g(小さじ4分の1強)
・有塩バター50gあたりの含まれる塩分 = 約0.75g(ひとつまみ強)
・有塩バター20gあたりの含まれる塩分 = 約0.3g
この数値に基づき、レシピ本に記載されている「塩 ひとつまみ」や「塩 小さじ1/2」を完全にカット(省略)して調理します。クッキーやパウンドケーキ、スコーンなどは、有塩バターの微かな塩味がむしろ甘みを引き立て、コクのある「塩キャラメル」や「塩バニラ」のような深みを生み出すメリットさえあります。ただし、デリケートなカスタードクリームや淡い風味のスポンジケーキでは塩味が際立ちやすいため注意が必要です。