物語の始まりは明治時代に遡る。1896年、フランスから海を渡って着任したギザン神父ら修道士によって創立されたのが、北海道北斗市に位置する「燈台の聖母トラピスト大修道院」だ。トラピスト会(厳律シトー修道会)の戒律である「祈り、かつ働け」の精神に基づき、修道士たちは自給自足の生活を目指して荒れ地を開墾し、日本最初期の本格的な酪農を開始した。
当時、日本において酪農技術や製菓・スイーツ産業は未開拓の分野だった。修道士たちは母国ヨーロッパの伝統的な知恵を持ち込み、土造りや牛の飼育、バターの製造に汗を流した。やがて試行錯誤の末に生まれたのが、当別トラピスト修道院クッキーの原型である。修練の日常とともに洗練されてきた歴史が、現代に伝わる深い味わいの礎となっている。