東京の街角に漂う食のトレンドは目まぐるしい。だが、ここ数年の変化は少し異質だ。かつて「おじさんの酒の肴」や「昭和の学校給食」という文脈で語られがちだった鯨料理が、ヘルシー志向の強い20代やフィットネス層の熱い視線を集めている。
背景にあるのは徹底した栄養価の視認化だ。牛肉や豚肉と比較して圧倒的に低い脂質、一方で鶏胸肉をもしのぐ豊富なタンパク質。特に過酷な渡りを行うクジラたちのスタミナの源である「バレニン」というアミノ酸誘導体が、現代人の疲労回復や運動パフォーマンス向上に寄与することが認知された。もはや懐かしむための食事ではなく、明日を生き抜くための積極的な食の選択肢なのだ。