甲状腺 全 摘出 後悔――執刀医の「命のために全摘しましょう」という言葉を信じ、手術台に登った患者たちが今、静かな絶望の中で身体の変化と戦っている。首の正面にある小さな内分泌器官を失うことが、これほどまでに日々の感覚を狂わせるとは、誰が想像できただろうか。悪性腫瘍の根治という最大の目的を果たしたはずの診察室で、患者の口から漏れるのは感謝の言葉ではなく、押し殺した溜息だった。
ソーシャルメディアや各種メディアで散見される甲状腺 全 摘出 後悔という悲痛な吐露は、単なる患者のわがままではない。首元の傷口が癒えた後に押し寄せる慢性的な倦怠感、変わってしまった声、急激な体重変化。生命の危機を脱した後に待っていたのは、「生きているけれど、以前の自分ではない」という深刻な喪失感だった。
執刀医の一言で決まった全摘、なぜ多くの患者が涙を流すのか
病院の診察室で「甲状腺全摘」を宣告されたとき、拒否できる患者はほとんどいない。悪性腫瘍の可能性を告げられれば、誰だって一刻も早く病巣を取り除きたいと願うからだ。しかし、問題はその後に起きる。
Yahoo!ニュースのコメント欄や患者闘病ドキュメンタリーには、術後のギャップに苦しむ日常が生々しく記録されている。「死の恐怖から逃れるために全摘を選んだが、こんなに毎日が辛いなら別の道を探せばよかった」。そう語る40代女性の言葉は重い。首を絞められているような違和感や、気圧の変化で増悪する首周りの引きつり感は、画像診断や血液検査の数値には現れない。内分泌外科学の視点からは「手術は成功」と判定されても、本人の生活の質(QOL)は著しく低下しているのが現実だ。
甲状腺全摘出後に「後悔」する原因とは?一生涯のホルモン補充療法や声の症状、体重変化など患者のリアルな葛藤
なぜ全摘出を選んだ人々は後悔するのか。最大の要因は、全身の代謝を司るホルモン工場を根こそぎ失うことにある。
第一に、一生涯のホルモン補充療法が不可欠になる点だ。毎朝決められた時間に薬を飲み続けなければ、生命を維持できないという精神的なプレッシャーは想像以上に重い。第二に、声の症状である。手術中に反回神経を損傷しなくても、組織の癒着や微細な神経の剥離によって、高音が出なくなったり、かすれ声が戻らなくなったりする。声を使う職業の人間にとっては死活問題だ。
第三に、コントロール不能な体重変化と代謝低下だ。どんなに食事制限をしても体重が落ちにくくなり、顔や足の浮腫(むくみ)が取れない。さらに、副甲状腺も同時に摘出・再植された場合、カルシウム代謝の異常による手足の痺れや強い不安感に襲われる。命は助かった。しかし、失ったものの大きさに直面したとき、患者の葛藤はピークに達する。