「昔は700円でお腹いっぱいになれたんだけどね」。路地裏の老舗で湯気を眺めていた常連の男性が、感慨深げに呟いた。ここ数年、小麦や光熱費の高騰を受け、ラーメン業界を襲った「1000円の壁」の崩壊。学生街である高田馬場においても、その影響は決して小さくはなかった。
しかし、単なる価格転嫁で終わらないのがこの街の地力だ。1杯1200円、あるいは1500円という価格帯を設定する店が増えたことで、店主たちはスープの出汁やチャーシューの質、自家製麺の素材選びに徹底的にコストを投じるようになった。結果として生まれたのは、安さの追求ではなく「この店でしか味わえない贅沢」という新たな価値。学生たちが「特別な日のご馳走」として暖簾をくぐる光景は、もはや珍しくない。