ひと口に「ダックのロースト」といっても、北京風と広東風では調理哲学から仕上がりまで大きく異なります。日本のレストランでも両者が混在しているため、違いを知っておくと店選びの解像度が上がります。
【北京風北京ダック(烤鴨)】
北京風の真髄は「皮の食感と香ばしさ」にあります。下処理として皮に水飴などを塗り、風干しして水分を徹底的に抜いた後、無煙の薪窯で吊るし焼きにします。肉自体には強い下味をつけず、皮のパリパリ感と香りを際立たせるのが特徴です。薄餅に白髪ねぎ、きゅうり、甜麺醤とともに包んで食べるのが定石です。
【広東風ローストダック(焼鴨)】
一方、広東風は「肉のジューシーさとスパイスの芳醇さ」を重視します。アヒルの腹の中に八角、五香粉、生姜、ニンニク、各種調味料を詰め込み、縫い合わせてから焼き上げます。皮だけでなく肉にもしっかりと下味が染み込んでおり、骨付きのまま肉ごとぶつ切りにして、梅ジャム(プラムソース)などをつけて豪快に味わいます。
日本国内の中華街やカジュアル店で見かける「身がたっぷりついたダック」の多くは、この広東風の系譜を引いたスタイルです。