日本における鳥類研究と愛鳥文化の歴史を振り返ると、キジバトは常に日本人の自然観の中心にいた。日本の鳥類分類学の礎を築き山階鳥類研究所を創設した山階芳麿は、その形態的多様性と地域亜種の精密な記録を残した。一方、「野鳥」という言葉を生み出し公益財団法人 日本野鳥の会を設立した中西悟堂は、彼らの鳴き声に耳を澄ませ、四季の移ろいと生命の躍動を詩的な筆致で描き出した。
中西悟堂が愛したかつての武蔵野の雑木林は姿を変えたが、キジバトは驚くべき柔軟性で人工的な都市環境に適応した。ベランダの植木鉢の隙間や街路樹のわずかな枝葉に簡素な巣を架け、コンクリートキャニオンに自らのソングを響かせる姿は、先人たちが思い描いた「人と野鳥の共存」のたくましい具現化と言える。